[原発のウソ 扶桑社新書 2011年6月11日初版]を読んで
                  京都大学原子炉実験所 助教授 小出裕章著



◇原子炉は本当に冷却できるのか

 5月12日、東電は福島原発1号機の原子炉圧力容器に水がほとんどたまっておらず、高熱で燃料棒の大半が溶融してしまったことを認めた「メルトダウン」。圧力容器の底に穴が開いて、注入した水や溶けた燃料が原子炉格納容器に流れ落ちている状態。大惨事にならなかったのは、格納容器の底にたまった水でたまたま燃料を冷却できたからに過ぎません。
 第一原発の敷地からプルトニウムが検出されていることから、核燃料を囲っているペレットが溶けていた。ペレットは2800℃程度で溶け、高温の核燃料は圧力容器(16cmの鋼鉄)の底に落下し、これを突き抜けて圧力容器(3cmの鋼鉄)に流れ落ちます。圧力容器は1400~1500℃で溶けてしまうので、水を注入し続けなければ、圧力容器の底が溶け、核燃料が地下に漏れ出してしまう。
 今回運が良かったのは、圧力容器の底に溜まった水と核燃料が反応し、水蒸気爆発を起こさなかったことです。もし、水蒸気爆発を起こしてしまえば、格納容器が吹っ飛んでしまい、桁違いに大量の放射性物質が一挙に吹き出したことでしょう。
 1号機に関しては、格納容器の底が抜けている可能性が高いので、核燃料は床のコンクリートを溶かし、地下にめり込んでいる状況だと思います(チェルノブイリと同じ)。「どうすればいいのか分からない」というのが政府と東電の本当のところだと思う。

       


 一度海水を入れてしまえば、原子炉は二度と使えなくなります。その為、原発の所長は独断で注入を指示できず、東電社長の決断を仰がねばなりませんでした。1号機への注入が始まったのは3月12日の早朝です。1号機はその間、10時間以上「空だき」状態となり、燃料の大部分が溶け落ちてしまいました。また、すべての原子炉で損傷が進んでいきました。今も炉心が正常に冷却できていないのは、この判断の遅れによる損傷が大きな原因となっている。


 ■空自機で帰京、防衛相指示で引き返す 東電社長、震災当日:2011/04/26朝刊
  原発事故が発生した3月11日夜、東電の清水社長が航空自衛隊の輸送機で出張先
 から東京に戻ろうとしたが、北沢防衛相の指示で輸送機が途中でUターンし、離陸した
 空自小牧基地に引き返していた。清水社長は当日、関西に出張中で、名古屋空港から民
 間ヘリで帰京しようとした。しかし、航空法の規定で飛ぶことができなかった。
  本来なら清水社長は東電の危機対応チームを率い、原子炉格納容器の圧力を下げる作
 業(ベント)といった緊急措置を承認するところだ。清水社長が東電本店に不在だった
 ために、事故発生直後の数時間という極めて重要なときに難しい決断を下すことに遅れ
 が生じた可能性があると一部では指摘されている。
  3月12日朝になってようやく清水社長が東京に戻った際、福島第1原発1号機では燃料
 棒が過熱し、容器内の圧力が危険な水準に達していたが、東電はベント作業を開始して
 いなかった。専門家らはベントの遅れが同日の同原子炉建屋での水素爆発につながった
 可能性があると指摘している。

   ※12日早朝に、菅元首相が現地視察を強行したことも忘れられない事実。
    その直後の記者会見中に、水素爆発が発生している。


※水蒸気爆発と水素爆発は別
 今回水蒸気爆発起こっておらす、水素爆発が起こって建屋我吹っ飛んている。
 水素爆発は、溶けたジルコニウムと水が反応し水素が発生します。この水素が圧力容器と格納容器から漏れ、建屋の天井に溜まった。これに引火して水素爆発が起こったとされている。


◆誰がSPEEDIを活用することに反対したのか、
   そして誰がヨウ素剤の使用に反対したのか。

 ■福島原発直近の自治体には甲状腺被爆を防ぐためのヨウ素剤が
  配備されていたが、結局使われなかった。


◆冷温停止はあり得ない⇒政府・東電の冷温停止宣言は嘘です!
 冷温停止とは、安定して原子炉を水で冷やすことが出来る状態を言います。つまり、炉心の温度が100℃を下回るようになることです。東電の発表では1号機圧力容器の底が抜けてしまっている。だから、圧力容器に水は溜まらないので、冷温停止はあり得ない。それよりも、底から抜け落ちた炉心が今、何処にあるのかさえ把握できていない。


◆放射能汚染水は?
 4月に放射能汚染水がコンクリート壁から海に大量に漏れました。見える部分だけをふさいだに過ぎず、また汚染水が減少しているように見えていますが、地下に漏れているからなんです。もしくは、海に漏れ出している。地下水に入った汚染水は陸と海のどちらかに流れていく。
 これを防ぐために、原発の地下に「地下ダム」を作る構想が東電の工程表にあるが、2年後なんです。余りにも遅すぎる。



◇レベル7とはどういう事故なのか

 多くの研究者は3月12日の水素爆発の時点でレベル6「大事故」は間違いないと確信しており、その後数日でレベル7に達したこともとっくに分かっていました。それなのに、保安員の当初の評価はレベル4「事業所外への大きなリスクを伴わない事故」でした。細野首相補佐官は「原則としてすべての情報を公開する。私を信じてください。」。枝野官房長官は「直ちに影響はない」とし、避難が必要だった汚染地域の住民でさえ長期間放置され、本当に無責任だと思う。
 チェルノブイリには4個の発電所が並んでいて、事故を起こしたのは最新鋭の4号炉でした。爆発と共に大量の死の灰が放出した。その中でも31人が生きながらにミイラとなり、悲惨な死を遂げている。事故後数年にわたり、放射能拡散を防ぐために動員された人は、累計で60万人に及ぶ。彼らが猛烈な被曝に晒されながら、4号炉を「石棺」で覆ったので、さらに大量の放射能が漏れ出る事態は防がれた。しかし、この「石棺」はすでに25年が経ち損傷が生じており、外側にもっと大きなシェルターを作ることになっていて、まだ自己処理は終わっていない。
 チェルノブイリ4号炉には、広島原発の約2600個分の放射能をため込んでいた。そのうち約800個分が、外に漏れてしまった。
 日本政府は4月現在において、福島原発から漏れた放射能は「チェルノブイリの約10分の1」と発表した(尚、保安院は8月26日、福島第1原子力発電所1~3号機から放出された放射性セシウム137が、広島に投下された原子爆弾の168個分にあたるとの試算結果を公表した。つまり、4月時点で広島原発80個分が、8月時点では倍の168個分だという個は、今でも放射能が漏れ出していることを物語っている。HP管理者)。



◇放射能とはどういうものか

 放射能は知覚できない。1999年のJOC臨界事故「レベル4」で、700人近くが被爆し、3人が大量被爆した。大量被爆した大内さんは、国立水戸病院に担ぎ込まれたが、診察拒否「放射能汚染されている被曝者はお断り」。千葉の放射線医学総合研究所から、東大病院へ運び込まれた。しかし、被曝量を評価した結果、もう助けられないことが分かってしまい、治療できない重度の状況だった。
 東大病院に運び込まれた当時の大内さんには、目に見える外傷はなく、看護婦さんとおしゃべるするほど元気な様子だったが、ただ肌が少し赤くなっていた。被爆一ヶ月後には全身の皮膚が焼けただれたようになってしまった。DNAが損傷しており、全身の細胞が正常に再生できないのです。皮膚だけではなく、内の肉も、骨も、内臓も、全部です。致死量を浴びたチェルノブイリの作業員達と同じ症状で、治療をしなければ2週間以内に亡くなっていたことでしょう。しかし、意識もなく全身の体液と血液を取り替えながら、83日間生きられた(詳しくは[朽ちていった命-被爆治療83日間の記録! 新潮文庫])。


◇自然放射能と人工放射能は違う

 田母神さんもですが、ラジウムやラドン温泉のように定量被曝は体に良いので、福島原発も気にすることはないとの主張の嘘が、本書を読んではっきり分かりました。
 福島原発から漏れた放射性物質は、チェルノブイリの約1/10で、広島原発の約100個分です。しかも、危険度は同じレベル7です。
 セシウム137のエネルギーは、レントゲンの約10倍もあります。しかも、レントゲンは電磁波なので体内に留まることは決してありません。自然の放射性物質ラジウムやラドンは、体内に取り込まれることはほとんど無く、温泉に入ってもすぐに体外に出てしまいます。しかも、ラドンの半減期は3.8日と短いので入浴の時だけ被爆します。
 ところが、セシウム137やヨウ素131は、自然の放射性物質とは異なり、体内に取り込まれます。ヨウ素の半減期は8日ですが、チェルノブイリでは甲状腺癌が多発しています。
 セシウム137は体内に蓄積され、半減期は30年と長く、30年間もレントゲンの10倍のエネルギーで四六時中被爆し続けます。
 放射線被曝の特徴として、瞬時に致死量の被曝を受けても、体温はほとんど上がらず、その時には何の違和感もないことです。ところが、遺伝子が壊れているので、細胞分裂が繰り返されると、異常な細胞ばかりが誕生し、二週間で死んでしまいます。現在治療方法は見つかっていません。
 この人工被曝に関して、しかも低量被曝の場合、遺伝子の修復機能が働かないことが明らかになってきており、遺伝子の異常の具合にもよりますが、数年から数十年しないと症状が出てきません。つまり、枝野氏が繰り返した「すぐに健康への被害はありません」は真っ赤な嘘で、御用学者共々、殺人者だと思います。

      



◇福島第一からでている放射能
 ■ヨウ素131
  体内に取り込まれると甲状腺に蓄積され、内部被曝から甲状腺癌を引き起こす。
  チェルノブイリ事故で分かったように、幼児や子供に与える影響がきわめて深
  刻だ。半減期は8日で、千分の一になるのに80日かかる。
 ■セシウム137
  半減期は30年と長く、千分の一になるのに約三百年かかる。
  土壌にとどまり外部被曝の原因となるほか、生物濃縮が起こる。
  福島の事故では海に大量の放射能汚水を垂れ流しているので、海産物にも長期
  にわたって大きな影響を与えるでしょう。
  体内に取り込まれやすく、全身の筋肉、生殖器などに蓄積され、癌や遺伝子障
  害の原因になる。
 ■ストロンチウム90
  体内ではカルシウムと同じ挙動を取る。
  その為、骨に蓄積し、骨の癌の他、白血病を引き起こす。
 ■プルトニウム
  年摂取限度は0.00052mgに設定されている最悪の毒物で、半減期は2万4千年。

      



◇安全な被曝は存在しない

 被曝のリスクには低線量に至るまで直線的に存在し続け、閾値はない。最小限の被曝であっても、人類に対して危険を及ぼす可能性がある。こうした仮定は「直線、閾値無し」モデル(LNTモデル)と呼ばれる[米国科学アカデミー 2005年報告]。
 広島長崎の近距離被曝者約5万人、遠距離被曝者約4万人、さらに比較対象のために原爆が炸裂した時に、広島・長崎にいなかった人(非被爆対象者)約3万人を対象に被爆影響を進めた。半世紀にわたる調査結果、年間50mSvの被曝量でも、癌や白血病になる確率が高くなると言うことが統計学的に明らかになりました。
 原子力推進派は、「年間50mSv以下の被曝は何の問題も無い」と主張してきた。「生き物には放射線被曝で生じる傷を修復する機能が備わっている」(修復効果)、「放射線に被曝すると免疫が活性化されるから、量の少ない被曝は安全、むしろ有益である」(ホルミシス効果)を根拠とし、LNTモデルを決して受け入れない。
 しかし、低線量の被曝では、高線量の被曝に比べ、1レム当たりの癌発生率が高くなる証拠がある。広島長崎の被曝者データがこの傾向をはっきり示している。更に、被曝の損傷を乗り越えて生き残った細胞集団に遺伝し不安定性が誘導され、長期にわたって遺伝的な変化が高い頻度で生じる現象が発見されている。加えて、最近になって「低線量での被曝では細胞の修復効果自体が働かない」というデータすら出はじめている。
 細胞分裂が活発な子供、胎児は、大人に比べて遙かに敏感に放射線の影響を受ける。「人体に影響のない被爆」などというものは存在しない。



◇子供に20倍の被曝を受けさせてはならない

 年間1mSvの基準は、1万人に1人が癌で死ぬ確率、これは我慢してくれと言うのが今の法律です。10mSvの被曝では、1千人に1人が癌で死ぬことになります。
 緊急時における原発作業員の被爆限度量100mSVの基準は、被曝による急性障害が出るラインの目安となっていた。それが250mSVに引き上げられており、急性障害が出ても我慢しろと言うことを意味している。
 4月19日、文科省は福島県内の「安全基準」を提示した。1時間当たりの空間線量「3.8μSv」(中学は地上から1M、幼稚園・小学校は地上から50CMでの測定)未満の学校には、通常通り校舎や校庭を利用させる。
 この「3.8μSv」は、年間の積算被曝量を「20mSv」と定め、子供が1日8時間戸外にいることを前提として導き出した数値です。この「20mSv」は原発作業員が白血病を発症した場合、に労災認定を受けられるレベルです。さらに、食物からの内部被曝,泥遊び,ホットスポット他による被曝が加算されることを、全く勘案されていない日本の基準は大人が年間1mSvで、敏感な子供がなぜ20倍者被曝を受けさせられるのか!
 若ければ若いほど放射線の影響が強くなる。放射線により損傷を受けた細胞がどんどん複製されるため、小児癌や白血病が引き起こされる。20~30代に比べ、赤ん坊の放射線感受性は4倍も高まる。

※簡単な計算
 20mSvは2500人に1人が癌で死ぬ。この2500人には大人も子供も含まれているのでしょうが、平均して20~30代の大人だと仮定します。子供の場合感受性がおおざっぱに5倍高いので、約500人に1人の子供が癌で死ぬ可能性があると言うことになります。これは小出助教授の計算ではありません。あくまでも素人の計算なので・・・


     



◇地球を暖め続ける原発

 二酸化炭素温暖化説は、今では嘘っぱちだと分かっている。NASAは温暖化の原因は、太陽の影響だと認めている。
 原発は核分裂に関しては二酸化炭素を出さないが、ウランの掘り出し、選別濃縮、他の行程はすべて石油を使っており、二酸化炭素削減の役に立っていない。しかも、原子炉で生成される熱の3分の1が電力に変換され、残りは海水で冷やされている。標準的な原発100万KWでは、一秒間に70トンもの海水を引き込み、温度を7℃上昇させて海に戻している。日本には年間約6500億トンの雨が降り、その内日本全体の川の流れの総量が400億トン。日本の原発54基で利用する海水は約1000億トンで、つまり原発は日本の海温を温暖がしている張本人ともいえる!



◇想定不適当事故

 福島原発事故は全ての電源が失われることにより起こりましたが、専門家は発電所の「全所停電」が一番危険なことを知っていた。しかし「発電所の全所停電は絶対に起こらない」ということにして、「想定不適当事故」という烙印を押してしまっていた。というのは、彼らの想定する事故では「ディーゼル発電、バッテリーが必ず動く」「安全装置はいついかなる時にも有効に働き、放射性物質を閉じ込める格納容器は最後まで決して壊れない」という仮定になっている。放射能は決して漏れない。格納容器が壊れるような事故には「想定不適当事故」なる烙印を押して無視した。だから環境汚染や住民被爆、住民避難、被爆治療などは全く考慮されていない。
 福島原発直後、各電力会社は非常用電源を準備し大丈夫としたが、配備された電源では容量が小さくて原子炉を冷やせないことが分かった。



◇原発を止めても電力に困らない

 ほとんどの日本人は原発を止めると電力不足になるので、原発を必要悪として受け入れざる得ないと思っている。
 原子力は日本の総電力の30%と大きな割合だ。しかし、実態は原発の設備利用率だけを上げて、火力発電所を休ませているので大きな割合に見えてしまう。2005年の原子力の設備利用率は70%で、電力が余るので揚水発電所という高コストな設備を作っている。尚、火力発電所の設備利用率は48%で、半分以上が停止している。今回の大震災で原発が止まって電力不足になったような印象がありますが、実は違います。火力発電所が被害を受けたことが大きいのです。
 ですから、火力発電所を復旧させ、稼働率を70%まで上げれば、原発を全部止めても、充分に間に合う。それでも、火力発電所の3割が停止しており、まだまだ余力もある。

    



◇ミニ知識
 ■M6の地震のエネルギーは、ほぼ広島原発1個分。
  阪神・淡路大震災のM7.3では、ほぼ82個分。
  311のM9では、ほぼ9000個分の大地震で、地軸の振動が変化して
  一日の長さが変化してしまうほどだった。
 ■六カ所村、再処理工場の放射性物質は計画的にそのまま海に捨てられる。
  放射性物質を破棄する場合、濃度規制を受けます。しかし、再処理工場から
  出る放射性物質は取り除けるにもかかわらず高コストのために規制の対象外
  とされている。
  一年間原発を動かすと、ドラム缶1000本分の低レベル放射性廃棄物が出る。
  すでに30万本程度あり、これを六ヶ所村では地下に埋めて監視する。
  その期間は三百年。
  高レベル放射性廃棄物に関しては、100万年もの管理が必要で、その莫大な
  コストと危険を全て子孫に押しつけることになる。
 ■「もんじゅ」で事故が起こったら即破局
  「もんじゅ」では冷却にナトリウムを使っている。もし事故が起こった場合、
  水をかけるとナトリウムと反応し大爆発が起こってしまう。そのため、今回の
  ような規模の地震に対してはおそらく何の対処もできないまま、破局を迎える
  ことだろう。
 ■英仏での核の再処理について
  本書によれば、核の再処理ににおいては、元々が軍事技術故に、日本は関与で
  きず、英国と仏国に依存している。例えば、英国の再処理工場では、原発が一
  年で放出する放射能をたった一日で、計画的にアイリッシュ海に流しています。
  アイリッシュ海はすでに放射能汚染され、そこで取れる海産物はチェルノブイ
  リ事故時に設定した放射能濃度を上回っています。対岸のアイルランド国会は、
  再処理工場の停止を求めています。
  六ヶ所村の再処理工場も本格稼働すれば、日常的に大量の放射能を海に垂れ流
  すことになるのは間違いない。周辺住民は原発以上の被爆を受けることになる
  と述べています。




◇地中に沈んだプルトニウムの危険:2011/09/17 提供:週刊実話

 福島第一原発の30キロ圏内では、住民がいつ我が家に戻れるか絶望視する声もあるが、ここへきてさらに深刻な問題も起こっている。
 「メルトダウンを起こした3号機では、燃料棒のプルトニウムが原子炉の底を突き破り地下に埋没してしまった。そのプルトニウムがどこへ行ってしまったのか、何もわかっていないのです」(政治評論家・本澤二郎氏)
 衆議院の決算行政監視委員会で8月10日、自民党の村上誠一郎議員から3号機のプルトニウムの行方について質問が出たところ、細川律夫厚労相ら当時の閣僚は何も答えられなかったのだ。
 質疑の翌日、村上議員にインタビューした本澤氏が言う。
 「プルトニウムは地下深く埋まっているはずですが、どこにあるのか誰もわからないし、突き止めようともしない。ただ、すぐ近くに海があるので、地下水を通じて海に流れているのは間違いありません。これについては東電もまったくノーチェック。政府も大マスコミも、臭いものには蓋をしているのです」
 村上議員は原発事故当初、低濃度の汚染水を海洋投棄したことに触れ、汚染物質はアリューシャン列島を経てサンフランシスコにまで達する可能性を指摘したが、政府は説得力のある答弁ができていない。
 「海洋汚染はどんどん続いています。怖いのは、セシウムと違ってプルトニウムの半減期が2万4000年と、気が遠くなるぐらい長いこと。その間も海洋汚染は続くのです。ここで、何らかの手を打たなければ、国際法違反になります。海洋汚染の被害を被った国からは、損害賠償を請求されるでしょう。しかし、政府は目先のことばかりにとらわれて何も手を打たないのです」(本澤氏)
 時間はもうない。



◇放射性セシウム:汚染マップ6県分公表、文科省:2011/11/11毎日

 福島原発事故で放出された放射性セシウムの土壌蓄積量を航空機から測定し、汚染マップ(岩手、山梨、長野、静岡、岐阜、富山)を公表した。岩手県一関市や奥州市、長野県佐久市、軽井沢町、佐久穂町と山梨県丹波山村などの一部地域で、放射性物質の量が半分になる半減期が2年のセシウム134と、半減期30年のセシウム137を合わせて、1平方メートルあたり3万ベクレルから10万ベクレルを計測した